|
京住みのゆゑにかあらむ回顧癖(くわいこへき)つのりて ゆくをあはれとも見つ 紫陽花忌(あぢさゐき)とは多佳女忌(たかぢょき)のことなるか あはれあはれと思ひ目つぶる 今日もまたわれは通りぬそのむかし 狩野元信(かのうもとのぶ)すみけるところ 夏ちかき京の逵(つむじ)に往き逢ひし 祇園老妓(ぎおんらうぎ)のものの言ひやう
拗ねものの無腸翁(むちゃうおきな)のざれ書きの文字を 愛でつつ京住みぞする 出雲路の旅にて得たるぼて茶碗見つつしあれば慵(もの)うからむか 去年食(こぞは)みし豆飯の味おもひつつ 八幡法師(やはたはふし)に消息をする 夕ぐれまでに片附けものをする妹(いも)の うしろ姿も梅雨曇(つゆぐも)りして 世を去りし祇園蘇小(ぎおんそせ)のいくたりを 思ひ出しぬ夜半の寝覺めに |